献血手帳のカード化の記事について (読売)

記事は読売のもので、引用元のURLは http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060728i307.htm ……ですが、既に削除されています。なお、記事末尾には(2006年7月28日14時41分 読売新聞)というクレジットがついていました。

日本赤十字社は10月から、献血手帳に代わり、献血者の氏名や献血歴などを磁気情報で記録した献血カードを導入する。

本人確認や献血者の個人情報保護を強化し、血液の安全性を高めるのが狙い。利便性も増し、日赤では「献血者が増えてくれれば」と期待している。

個人情報保護の強化血液の安全性を高める、この二点がカード導入の最大の目的のようです。

しかし、生体情報の記録できない磁気カード程度で個人情報保護強化されるとは考えられません。理由など詳しいことは後述します。また、安全性についても多少の懸念を覚えます。

利便性についても、小型化によるメリットはあるとは思いますが、本当に利便性が増すのは献血者ではなく主に職員のほうではないでしょうか。少し整理してみましょう。

おそらく「(4)」の作業はけっこうな手間だろうと思います。住所まで書いてくださるところも多いので、この労力はばかにならないと思います。もちろん職員さんが楽できるようになるのは良いことだと思いますが、これで献血者が増えるかというと、それはちょっと甘いのではと思います。

日赤が血液事業を始めたのは1952年。献血手帳の呼び名は61年に登場し、以降はデザインを変えながらも、手帳形式が存続してきた。現在は、年間約200万冊を発行している。

残念ながら今は掲載されていないのですが、以前高知赤十字血液センターのウェブサイトには「初代の献血手帳」の画像がありました。赤十字マーク以外は配色が緑と白で、現在の献血手帳とはかなり趣が異なります。

しかし、手帳は水にぬれたり破れたりしやすいほか、氏名や生年月日などが記入されており、紛失や盗難で個人情報を悪用される恐れがある。

健康保険証も最近ではプラスチックカードになりつつありますが、個人的には紙でも特段の不便はありませんでした。でも、(献血手帳を)間違って洗濯してしまったというエピソードも実際にあり、丈夫さではやはりプラスチックカードのほうが有利でしょう。ちなみにぬれたり破れたり紛失した場合は日赤に記録のある範囲で手帳を作り直してもらえます。盗難でもおそらく同様。

プライバシーに関しても献血手帳がだめとは限らず、様式や運用を変更するだけで改善できるはずです。つまり、氏名はともかくとしても、生年月日や住所の記入をやめればよいのです。実際、今までに住所の記入されていない手帳で何度も献血したことがありますが、何も不便はありませんでした。

……とはいうものの、移動採血の際に携帯電話が圏外でネットワークにつながらない場合には手帳の個人情報も一応使用するらしいです。

今年4月からは、検査目的での身分を偽った献血などを防ぐため、献血手帳があっても身分証の提示が必要になるなど、不便な面が多くなった。

新しい献血カードは運転免許証サイズ。受付でカードを入れてパスワードを入力すれば、身分証がなくても献血できる。

日経の記事同様、今回の記事で最も気になったのはこの部分です。私が今までに正式に身分証の提示を求められたのは本人確認が強化された2004年10月だけで、そのとき“確認しました”という意味のスタンプを手帳に捺印されて以降は提示を求められず、まったく不便を感じませんでした。手帳より便利になるということは、初回の身分証の提示すら省略できるのでしょうか? まさかそんなことはないと思いますが……。

また、既に指摘されていますが、カードの本当の持ち主がわざと第三者に暗証番号を教えた場合はどうなるのでしょう? これが磁気カードでなくICカードなら生体情報を持たせてカードと人間の一致を高い精度で確認することができると思いますが、暗証番号程度では実に不安です。キャッシュカードやクレジットカードと違い、他人に暗証番号を知られて自分が献血できなくなっても別に困らない人は大勢居るでしょうから。

血液検査のデータはカードに含まれておらず、磁気情報を不正に読み取るスキミング対策も講じられている。

この部分、日経の記事と食い違いがありますが、どちらが本当なのでしょうね?



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