以下、引用元は2006年7月26日の日本経済新聞朝刊13版社会面の「献血手帳、磁気カードに」(副題「日赤 身元確認しやすく」)という記事です。「二〇〇四年十月」→「2004年10月」などの変更は適宜行っています。
まず最初の段落ですが――
日本赤十字社は10月から献血手帳を磁気カードに順次切り替えることを決めた。輸血用血液の安全性向上のため、献血者の身元確認をしやすくし、各種ウイルスの感染検査目的の偽名献血に一定の歯止めをかけるのが狙い。
身元確認が大事なことは同意しますが、磁気カード導入でなぜ身元確認がしやすくなるのか、記事の続きを読んでもわかりませんでした。“公的な身分証明書によって本人確認ができた人”の献血手帳にはその旨の印がつけられ、以後の身分証提示は省略されます。初回の提示はどうしても必要ですし、これ以上「身元確認をしやすく」できるものでしょうか? ……と、これは記事を通して日赤に対して感じた疑問です(以後同様ですが)。
次の2段落――
日赤によると、輸血によるウイルス感染などが疑われる場合、献血者の追跡調査ができるよう2004年10月から初回の献血時に運転免許証や保険証などの身分証の提示を求めている。
しかし、献血者の中には身分証を携帯していなかったり、ウイルスの感染検査目的で偽名を使ったりするケースも後を絶たず、日赤は今年4月から三回連続で身元確認ができない場合は献血を断る制度を導入していた。
確かに私も2004年10月に身分証を提示しました。献血自体は初回ではありませんでしたが、“献血+身分証提示”としては一応初めてということで対応しました。さて、現状は
そして気になる最後の段落――
10月から導入する磁気カードには身元情報や献血時の血液検査データを記録。献血時にカードを読み取り機に通し、4ケタのパスワードで本人確認できるようにする。 これだけのセキュリティですと、知人にパスワードを教えてもらえば簡単になりすましできてしまいます。現行では何度も氏名や血液型や生年月日を確認されますが、これがパスワードに変更されるとすれば本人確認の精度が落ちることになります。非常に懸念されます。 また、身元情報や血液検査データも記録されるとのことですが、デメリット(スキミングによるプライバシー流出)は考えられてもメリットがいまひとつ――いやまったく感じられません。身元情報や血液検査データは現行でも日赤のデータベースに入っていますので、磁気カードに記録する必要がありません。献血の経験はともかくとしても、日経の記者ともあろう方がそのくらいの疑問(プライバシー流出の可能性)を覚えなかったのでしょうか? 実に残念です。三回連続で身元確認ができない場合は献血を断る
ということですが、磁気カードを導入した場合はどうなるのでしょうか? 身元確認ができなくてもカードを発行してしまっては危険ですし、逆に発行しないのなら手帳での扱いと変わりません。手帳のままでも
身元確認ができない場合は献血を断る
という対応でも良いのでは?