不振の打開に向けて

血液の確保 仙台市不振という新聞記事を宮城県在住の某氏よりいただきました。ありがとうございます。ちょっとこれを俎上に載せてみたいと思います。

なお、出典は2003年6月22日の朝日新聞(朝刊)宮城県内版です。

血液の確保 仙台市不振

全血、成分ともに下回る 駅周辺の整備が影響?

県内では、梅雨時や冬場を中心に、必要とされる血液の量が献血では確保できず、一時不足することもある。最大の理由は仙台市の不振で、県赤十字血液センターでは職員らが市中心部にある企業を回って常設の献血ルームの利用を呼びかけている。7月の「愛の献血助け合い運動」月間を前に県内の「献血事情」をさぐった。

企業をターゲットにする、というのはどの程度の効果があるのだろう。移動採血車(献血バス)の受け入れを求めるならともかく、献血ルームへの来訪を求めるならむしろ大学生や専門学校生のほうが効果的ではないかと思う。働き終わったころにはえてして献血ルームは閉まっているし。

休日に来てほしいというアピールならわからないでもない。

02年度に県内で献血した人は通常の全血献血がのべ約7万8千人、血小板や血漿などの成分献血がのべ約3万1千人だった。

センターは、災害が起きても血液を安定供給するのに必要な量をもとに、献血の目標人数をまとめているが、達成率=グラフ参照=は全血、成分とも目標を下回った。

地域別では、仙台市の達成率が低いのが目立つ。ここ数年、同市では献血する人が増える傾向にあるが、成分献血は目標の半分に満たないなど県全体の足を引っ張った形だ。

引用文中に「グラフ」と書いてあったものを表に直してみた。

地域別の献血目標達成率(02年度)
場所全血成分
献血ルーム70%強80%
仙台市80%強40%
仙南110%弱110%弱
塩釜120%強90%強
岩沼90%110%強
黒川100%強120%
大崎100%強100%強
栗原100%強100%強
登米110%100%強
石巻100%100%
気仙沼100%強100%強
県全体90%80%

(献血ルーム、仙台市以外は保健所の管内)

「100%強」などと大雑把な書き方をしているが、スケールだけ示して具体的な数値が記述されていなかったのでお許し願いたい。

それはともかく、献血する人が増える傾向にあるのに目標に満たないとはどういうことだろうか? 目標が高すぎるのか、増え方が足りないのか、あるいはその両方か。できれば仙台市のここ数年の目標と実績を見てみたいところである。

センターは、各地の企業や学校などをバスで回って献血を実施しているが、成分献血の場合、採血後の休憩時間も含めると1、2時間かかる。センターは「特に仙台では、これだけ長い時間、仕事から離れられる人が少ないようだ」とみている。

わかる。成分献血は、仕事の合間にできるようなものではない。時間的にもそうだが、私の場合成分献血をした後はけっこうぐったりするので、そういう意味でも仕事中にはやりたくない。同じように感じている人も居るのではないか。

仙台市中心部に4カ所ある献血ルームも伸び悩んでいる。来所者が最も多いJR仙台駅の「仙台駅北口ルーム」が、地下道開通など駅周辺の整備が進んで人の流れが変わり、訪れる人が減ったのが響いている。

記事の見出しにもなるくらいだからここがポイントなのだろうが、ある程度事情をわかっている人間にはちょっと腑に落ちない記事ではないだろうか。そう、仙台駅北口ルームは全血献血しか受付けていないので、ここに来る人が減ったからといって成分献血の達成率には影響がないはずなのだ。他のルームは仙台駅から少々離れており、駅周辺の整備が進んで人の流れが変わってもその影響は無視できよう。

ついでに言えば、仙台駅北口ルームの来所者が最も多いのも全血しか受け付けていないからだろう。シャア専用ではないが、成分に比べれば全血は3倍くらい早く回転するし。

……ただ、長い目で見れば影響はあるのかも知れない。高校生ぐらいのときに献血を経験しないとその後(大人になってから)やる人は少ないそうなので――

  1. 仙台駅を利用する高校生が献血ルームの前を通ることが少なくなる
  2. 高校生が献血を意識することが減る
  3. 大人になっても献血をしなくなる

……となることは予想できなくもない。

ところでここからはやや無責任な提案なのだが、仙台駅北口ルームを全血専門から成分献血重視なルームに変更してはどうだろうか。これは“成分献血する人にはリピーターが多い”と仮定しての話だが、自然な人の流れを期待できない場所ならリピーターを狙ったほうが好結果が出そうな気がする。逆に、藤崎ルームや一番町ルームのほうが“飛び入り”には向いた場所のように思える(参考:献血ルームのご案内)。一番町は土日は成分献血のみだが、高校生などの“飛び入り”を受け入れても良いのではないだろうか(18歳未満は全血200ml献血しかできない)。確かに、ちょっと歩けば藤崎もあるので全血希望者が来ても「すみません今日は成分だけなので、藤崎でお願いしますね」でも良いのかも知れないが、歩いているうちに「やっぱヤメ」ということもないとは言いきれまい。

献血する人の約9割は2回目以降の「リピーター」だ。センターは、年1回献血している人に2回、3回と献血してもらおうと、献血でポイントがたまる「けんけつくらぶ」カードを発行している。

誕生日や結婚記念日に献血すると割り増しポイントもあり、1年間で集めたポイントに応じて記念品がもらえる。だが、センターは「予算の都合もあり、記念品は洗剤やバッジなど『粗品』程度。やはり、頼りは献血する人の善意です」と話している。

ここからが私の持論なのだが、善意をあてにするなら善意を引き出す努力をせねばならない。ハガキなどでダイレクトメールを出すとかいうのは基本だが、他にも手はある。その「手」はときどき人に話したりもするし、(宮城ではないが)献血ルームのらくがきノートに書いて職員さんの賛同を得たこともある。献血をやっていてよかった、これからもやるんだ――そう思わせる材料を赤十字は持っているだろうし、持っていなくても集めることができるはずなのだ。ま、これは直接提案しておこう。

『粗品』(処遇品)だが、“モノで釣る”ようなやり方にはえてして批判もあるものの、何かしらいただければそれはそれでうれしいものである。ちなみに一般向けには消耗品、マニア(?)向けには赤十字マークのついた小物……といったように2通り以上のものから選択できると良いと思う(記事でも洗剤やバッジなどとあるのでそこから選択できると良いだろう)。あと、どうせいただけるならば安くても使えるもの、いいものが欲しい。たとえばクリアホルダーなんて高くても1枚百円もしないが、赤十字マークとセンター名を入れただけのものでもいただければ「献血したんだ」って思い出にもなるものだ。ただ、ポイントをためてクリアホルダーだけだとちょっと寂しいが……まぁ、例ということで。

実用品でなくとも、記念になるものならそれもうれしい。

しかし、赤十字の予算配分にも問題があるようだ。よそで聞いた話だが、実績のあるセンターには予算が多くまわるらしいがそうでないセンターには厳しいらしい。お役所仕事といおうか、どうも戦略的投資という考え方がないようだ。いろいろと制約もあるのかも知れないが、予算不足は企業と協力しあってどうにかならないものか。たとえば、献血の協力依頼のダイレクトメールの一部に協力企業の名前を入れるとか……血液運搬車の寄贈と同じく、企業イメージの向上にもなると思うのだが、どうだろうか。



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